薬物療法

(1)非ステロイド性消炎鎮痛薬

  • 主なものとしてボルタレン、ロキソニン、セレコックスなど。ジェネリック医薬品も多く発売されている。
  • 疼痛の改善のみを目的とする、いわゆる「痛み止め」。
  • 関節破壊抑制作用はない。つまり関節リウマチは良くはならない
  • 非常に多くの患者様に使用されているが、さまざまな副作用を有する。
主な副作用
  • 過敏症ショック、虚脱、過度の体温下降、四肢冷却
  • 浮腫、尿量減少、高血圧、腎障害、心不全
  • 出血傾向、骨髄障害(再生不良性貧血、白血球減少、血小板減少)
  • 消化性潰瘍・穿孔、直腸肛門出血(座剤)、悪心、嘔吐、下痢
  • 眠気、めまい、耳鳴、中毒症状(大量)、無菌性髄膜炎
  • アスピリン喘息(アスピリンに限らない)
  • 心血管障害(アスピリンを除く)

(2)副腎皮質ステロイド

  • 炎症を速やかに抑える。
  • 関節破壊を抑えるエビデンスは、短期間に限られる。
  • 多くの患者様が服用されている。
  • 長期服用による副作用に注意が必要。
  • 炎症を早期に抑えるために補助的に使用する。(出来れば2年以内)
主な副作用
  • 副腎不全、退薬症候(減量や中止時)
  • 感染症の誘発・増悪(予防が必要)
  • 動脈硬化(リスク管理が必要)
  • 骨粗鬆症骨折、低身長(予防が必要)
  • 消化性潰瘍(予防が必要)
  • 糖尿病の誘発・増悪(リスク管理が必要)
  • 精神障害(大量の場合)
  • 異常脂肪沈着(中心性肥満、満月様顔貌、野牛肩)
  • 多毛、皮下出血、にきび、皮膚線条、皮膚萎縮、発汗異常
  • 白内障緑内障、眼球突出
  • 浮腫、高血圧、うっ血性心不全、不整脈
  • ステロイド筋症、月経異常、白血球増多

(3)抗リウマチ薬

抗リウマチ薬は、関節リウマチと診断されればまず開始する基本的な薬剤。
関節炎を抑え、関節破壊の進行を抑える目的で使用する。 副作用には注意が必要。併用療法にも使用される。

主な抗リウマチ薬

リウマトレックス(メトレート・メトトレキサート)
  • 関節リウマチ治療の中心的な薬剤
  • 関節破壊の進行抑制作用が明らか。
  • 有効用量は個人差があるため、患者様毎に設定が必要。
  • 二次無効でも増量作用が期待できる。
  • 副作用:肝障害、血液障害、間質性肺炎、口内炎、消化管障害、リンパ腫等。
  • 血液障害、間質性肺炎、感染症は重篤となる可能性がある。
  • 副作用軽減のための葉酸併用を行う。口内炎、肝障害、血球減少を予防出来る。MTX最終服用後48時間目に5mg/w投与する。
プログラフ(タクロリムス)
  • 日本で開発された免疫抑制剤
  • 臓器移植後の拒絶反応を抑制する薬剤として世界中で使用
  • 関節リウマチに対しては少量の使用で作用を発揮。
  • 他の抗リウマチ薬の作用を高める可能性があり、併用療法で使われることも多い。
  • 主な副作用は腎障害、糖尿病、高血圧。ほとんどの場合、副作用は薬剤中止により軽快します。
ブレデイニン
  • 関節リウマチに使用する量では、比較的副作用の少ない免疫抑制剤
  • 軽症の関節リウマチや、他剤に追加して使用されてきた。
  • この他、SLEや腎移植に適応が有る。
アラバ
  • 作用発現が早い(~4週)
  • 欧米では標準的薬剤。
  • 肝毒性ー本剤の活性代謝物の半減期が2週間と長いため、作用が長期にわたる場合がある。
  • 副作用が出た場合、クエストランによる薬剤除去が必要な場合がある。
  • 間質性肺炎
  • 下痢 腹痛 発疹 脱毛 上気道炎 等
アザルフィジンEN(アザスルファン・サフィルジン・ソアレジン)
  • 最初に使われることも多い。
  • リウマトレックス、リマチルなどと併用することも多い。最近、費用対効果の観点から併用療法に注目が集まっています。
  • 作用発現までに1~3ヶ月を要する事がある。
  • 間質性肺炎、腎障害、感染症のリスクが高い人に使いやすい。しかし二次無効のリスクが有る。
  • 関節破壊抑制作用が示されている。
  • 主な副作用として皮疹や発熱、肝機能障害、胃腸障害など。稀に骨髄抑制という血液の異常。
リマチル(ブシレート、ブシラント・ブリマーニ・マイチミン・ラルビル・レマルク)
  • 日本で開発された。日本では最初に使われることも多い。
  • 関節破壊抑制作用が示されている。
  • 中等度以下の関節リウマチではリウマトレックスと同等の作用。しかし二次無効のリスク有り。
  • 感染症のリスクが高い人にも使いやすい。
  • 主な副作用は、皮疹、蛋白尿。定期的な尿検査は必須
  • 稀に味覚障害、肝機能障害、胃腸障害、黄色爪など
シオゾール
  • 当初は2週に1回、落ち着いたら月に1~2回、筋肉内に注射します。
  • 歴史の古い抗リウマチ薬。
  • 関節破壊抑制作用が示されている。
  • 重篤な副作用は少ない。感染症のリスクが高い人にも使用出来る。
  • 主な副作用は、皮疹、胃腸障害、蛋白尿など
  • 稀に薬剤性の肺炎を起こします。
リドーラ
  • 一般名:オーラノフィン
  • 内服の金製剤。
  • 明らかな関節破壊抑制作用は示されていない。有効性は低い。
  • 副作用としては下痢や軟便、皮疹など。
オークル/モーバー
  • 一般名:アタクリット
  • 遅効性で、作用も弱い。明らかな関節破壊抑制作用も示されていない。
  • 副作用が比較的少ない。
コルベット/ケアラム
  • 2012年と発売は新しい。
  • 有効性はアザルフィジンと同程度。
  • 肝障害に注意が必要。
  • 感染症のリスクが高い人や腎障害、肺合併症のある人には使いやすい。
ミノマイシン
  • 抗生物質であるが関節リウマチに有用性が指摘されている。
  • NO産生抑制作用や、活性酸素生成抑制、好中球遊走や貪食抑制作用。
  • 肺病変を持つ方に、時に使用する。

(4)生物学的製剤

  • 有効性が高い。
  • 症状や関節破壊の抑制作用も高い。
  • 感染症などの副作用に注意が必要。
  • 価格が高い。

生物学的製剤

レミケード(インフリキシマブ)
  • 日本で最初に発売された関節リウマチの生物学的製剤
  • 点滴製剤で、1回の投与に約2時間かかる。
  • 初回投与0週として、2週後、6週後、その後は基本的に8週間隔に投与する。
  • 十分に作用が得られない場合、投与量を増量したり、投与間隔を4週まで短くする事が出来るのが特徴。
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須。
  • 関節リウマチ軽快後に、中止出来る可能性が示されている。
  • 田辺三菱製薬レミケードのHP(http://www.riumachi21.info/patient/index.html
エンブレル(エタネルセプト)
  • 日本で2番目に発売された関節リウマチの生物学的製剤。
  • 50mgを週1回または25mgを週2回皮下注射する。
  • 25mg週1回など、状況により減量しやすい。
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではないが、併用の方が有効性は高い。
  • 自宅などで自己注射が可能。
  • 製薬会社のエンブレルHP(http://www.enbrel.jp/
ヒュミラ(アダリムマブ)
  • 2週間に1回皮下注射する。
  • 自宅などで自己注射が可能
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではないとされるが、有効性の差が大きいので出来る限り併用。
  • 関節リウマチ軽快後に、中止出来る可能性が示されている。
  • 製薬会社のヒュミラHP(http://www.e-humira.jp
アクテムラ(トシリズマブ)
  • 4週に1回の点滴(約1時間)または2週に1回の皮下注射。
  • 皮下注射は自宅などで自己注射が可能
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではない。
  • 日本で製造された。
  • 減量投与でも有効性が保たれる可能性がある。
  • 採血検査の炎症所見が上がりにくくなるため、感染症などに注意が必要。
  • 製薬会社のアクテムラHP(http://chugai-pharm.jp/hc/ss/pa/sf/act/RA/cnt/abt/01_01_001.html
オレンシア(アバタセプト)
  • 投与3回目までは2週間に1回、その後は月1回の点滴(約1時間)。または週に1回の皮下注射。
  • 皮下注射は自宅などで自己注射が可能
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではないが、併用の方が有効性は高い。
  • 減量投与でも有効性が保たれる可能性がある。そのためややリスクが有る人(高齢者など)で、使用しやすい。
  • 製薬会社のオレンシアHP(https://www.orencia.jp/
シンポニー(ゴリムマブ)
  • 4週に1回の皮下注射のため簡便。
  • 有効性が不十分な場合、増量が可能。
  • 皮下注射だが、医療機関での投与が必須。
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではないが、併用の方が有効性は高い。
  • 製薬会社のシンポニーHP(http://www.simponi.jp/pts/about_simponi
シムジア(セルトリズマブ)
  • 投与3回目までは2週間に1回400mg、その後は2週に1回200mgまたは4週に1回400mgの皮下注射。
  • 自宅などで自己注射が可能
  • 即効性が期待されている。
  • リウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではないが、併用の方が有効性は高い。
  • 胎盤および乳汁への移行がほとんどないと考えられている。
  • 製薬会社のシムジアHP(http://www.cimzia.jp/pts/cimzia/cimzia.html

(5)分子標的治療薬

  • 有効性が高い。
  • 全体的に臨床データが少ない。
  • 副作用に細心の注意が必要。
  • コストが高い。
ゼルヤンツ(トファシチニブ)
  • 内服のため簡便。1回1錠(5mg)、1日2回。
  • 減量投与でも有効な可能性がある
  • データ上はリウマトレックス(メトトレキサート)との併用が必須ではないが、現時点では全例調査中であるため、併用が必要とされている(2014年5月現在)。
  • 帯状疱疹や結核、各種肺炎などの感染症に注意が必要。悪性腫瘍の合併も現時点で他のリウマチの方と比べ有意に増加するとはされていないが、開始前スクリーニングをしっかりする必要がある。
  • 過去に悪性腫瘍の既往が有る方は使いにくい。
  • 製薬会社のゼルヤンツHP(http://xeljanz.jp/riumachi/about/index.html

手術療法

関節リウマチに対する手術は、主に関節破壊が進行してしまった関節の再建を目的に実施されます。最近は治療薬の進歩により、国内の手術件数は減少傾向にあります。

(1)滑膜切除術

関節リウマチになると、関節の滑膜の増殖・肥大が起きます。これが関節の腫れや痛みの原因となるため、滑膜切除術が行われることがあります。
滑膜切除術は従来、関節を切開して行っていましたが、最近では関節鏡を用い、大きく切開しないでも手術ができるようになりました。

滑膜切除術

(2)人工関節置換術

関節破壊が進行してしまった場合には、人工関節置換術が行われます。骨や関節の破壊された部分を取り除き、新たに人工関節に置き換える手術です。
人工関節置換術は、肩関節や肘関節、股関節、膝関節などに行われます。歩行困難となった患者様が歩行可能となるなど、機能向上やQOL(生活の質)向上が期待されます。

人工関節置換術

(3)関節固定術

関節破壊が進行してしまい、頻繁に脱臼(関節の骨がずれた状態)が起こる場合には関節固定術が行われます。
関節を金具で固定する手術です。関節は固定され動かなくなってしまいますが、脱臼を防ぎ、痛みを軽減することができます。股関節や手関節、膝関節、足関節、頚椎や脊椎などに行われます。

関節固定術